沖尚独自の主権者教育「グローバルシティズンシップ教育」

沖尚独自の主権者教育「グローバルシティズンシップ教育」

名城 政一郎

尚学学園副理事長
沖縄尚学高等学校附属中学校 校長
沖縄尚学高等学校 副校長
博士(教育)

日本だけでなく世界で認められる「大人」になる

世界の多くの国と同様、日本でも、2016年から、選挙権年齢が18歳に引き下げられました。つまり、18歳までに、地域や国、世界の課題について判断できる知識と知恵を学ばなければならない、あるいは、現在の代議制民主主義を前提とすると、どのような人(=政治家)に自分の判断を委任すべきかを学ばなければならなくなったといってもいいでしょう。
18歳というとそのほとんどが高校3年生です。ですから、遅くとも、高校3年になるまでには、主権者としての意識を持ち、どのように考え、行動するかを学んでおく必要があります。主権者となるために必要な意識、知識、知恵を学ぶのが「主権者教育」です。しかも、グローバル化の進展を考えると、これからの「大人」は、日本だけでなく「世界で」大人として通用する資質を身に着けておく必要があります。
沖縄尚学が目指す「グローバル教養人(educated global citizens)」は「世界で教養人とみなされる人」を意味しますが、これは「グローバル・シティズンシップ(global citizenship)」という考え方を基礎としています。

グローバル・シティズンシップとは、「世界で大人とみなされる資質」(名城政一郎)のことです。
本校では、シティズンシップ研究の成果をふまえ、「4つの帰属意識(ローカル・ナショナル・リージョナル・グローバル)」「責任感」「政治参加の意欲」「批判的思考力」「公正を求める姿勢」を、世界で認められる大人の資質とみなしています。「帰属意識」だけ「ローカル」から「グローバル」までの4つの段階を明示したのは、4つの帰属意識をもった人であれば残りの4つの資質についても、取り扱う問題に応じて「ローカル」から「グローバル」に優先順位をつけられると考えるからです。

言い換えると、世界で大人とみなされる資質の中で、「帰属意識」(=その集団のためを思って行動しようとする意識)が最も重要だということです。まず、日本人であれば、自分の住む地域や国だけでなく、アジアや世界に対する「帰属意識」が必要になります。解決しなければならない問題の多くが、日本だけでなく、アジアや世界にかかわるからです。たとえば、グローバル・シティズンなら、地球温暖化の問題を、ひとつの地域や国の利益を優先させて考えるのはおかしいと判断し、かつ、それぞれの地域や国の事情をいかに考慮するかも考えるはずです。地球・国・地域のすべてに「帰属意識」があるからです。
沖縄尚学の主権者教育=グローバル・シティズンシップ教育は以下のような学習をとおして、「帰属意識」「責任感」「政治参加の意欲」「批判的思考力」「公正を求める姿勢」を身につけていきます。

  • シティズンシップの基礎知識(シティズンシップとは何か・シティズンシップの4つの段階など)
  • ロジカル・シンキング(=論理的思考力)とクリティカル・シンキング(=当たり前や前提を疑う力)の養成
  • 代議制民主主義の仕組みと分析→主に国内の政治問題のチェックポイントを学ぶ
  • グローバル社会の特徴と問題点(国内秩序と国際秩序の違い)
  • ケース・スタディ(国際政治学や国際経済学の理論や考え方をふまえ、国際問題を理解し、分析する)

沖縄尚学ではこれまで、主権者教育の一環として、那覇青年会議所の協力のもと、知事選2回、国会議員選挙2回の模擬選挙を実施してきました。生徒たちは、争点となっている問題について事前学習したうえで、実際の立候補者の演説をきいて投票します。これからもそのような機会を増やしていきたいと考えています。

2016参議院議員選挙 模擬投票

事前学習1

代議制民主主義のしくみ

事前学習2

「18歳投票の意義」「参院選の争点」糸数慶子氏、國場幸之助氏

参院選 沖縄選挙区立候補者を招いての模擬投票 伊波洋一候補、金城辰郎候補、島尻あい子候補

シティズンシップ講座(移民問題について)
高1・2生の感想文(無記名アンケートから抜粋)

見る角度を変えるだけで違って見える

普段見ている国内外の時事問題に関するニュースが、見る角度を変えるだけで、こんなにも違って見えるということに驚きました。移民問題で一番大切な資質、それは「帰属意識」。それがあるのか、ないのかで全く異なる結果が出てくることがわかりました。最初は、摩擦の原因は移民してきた側にあると思って映像を見ていましたが、講座を通して、受け入れ国側の方にこそ大きな問題があるということに気づきました。今回の講座を受講したことで、時事問題に関するニュースに関心を持つことができました。

受け入れ国の姿勢

移民問題についてはニュースで見たことがある程度でしたが、今回の講座で深く考えることができました。最初にドイツでの移民問題の事例を見た時には、この問題をどのように理解し解決していくべきかについて全くわかりませんでした。しかし、今回の講座で「帰属意識」や「受け入れ国側の公正を求める姿勢」というポイントで考えることで、その糸口にたどり着きました。受け入れ国には、資質を確認し、権利や義務を与えるという順序が大切だとわかりました。

客観的に見る大切さを知りました

ニュースで報道されている内容をただ単純に受け取るのではなく、「批判的思考力」を用い、その問題を客観的に見て行く姿勢の大切さを再認識させられました。これからも「クリティカルシンキング」の大切さを忘れずに、グローバル・シティズンとして生きていきたいと思います。

日本が受け入れるならば...

この講座を聞くまでは、正直なところ「移民問題は日本には関係ないし、どうでもいいかな」と思っていました。しかし、今回の講座で日本の移民受け入れ制度にも着目し、その制度の問題点などを読み取ることで、移民問題がより身近な問題となったように感じました。また、ドイツやフランスなどのヨーロッパ諸国での移民に対する差別問題の実情を明確に知り、その原因を探ることによって「信頼感の公式」がいかに重要なのかも知ることができました。また、自分自身でも、もし日本が移民受け入れをするならば、どのような制度が最良なのかについても考えるようになりました。
自分の家族との会話の中でも、この問題について意見をきき、より考えが深まったように思います。これからも、このような社会問題を取り上げたシティズンシップ講座にぜひ参加したいと思いました。

移民問題の複雑さに気づきました

講座を受ける前までは、移民問題についての自分の考えはマジョリティーだと思っていましたが、個々人の考えが、クラスやグループという限られたコミュニティー内ですら全く異なるということに気づきました。極端な考えの人やバランスのとれた考えの人、どちらの意見にも納得できる部分があり、改めて、この問題は複雑で容易に解決できる問題ではないと思いました。今回の講座をきっかけに、移民問題に関する情報にさらに耳を傾け、深く考えて行こうと思いました。

グローバルシティズンの大切さ

この講座を通して、普段のニュースや新聞で報道されている移民問題について、おおざっぱな情報だけでなく、問題の本質的なところまで知ることができました。異なる国同士が基本的価値観を共有することは、かなり難しいことだとも感じました。移民の人達が、その国の社会の中で生活様式や考え方をまったく変えて生きて行くことは難しいことです。
特に、日本では欧米の国々のように、人種民族が混在しているわけではないので、日本人が彼らを偏見なく見て接していくことは簡単なことではないと思いました。グローバル・シティズンとしての意識と考え方を持つことが大事だと思いました。