本校独自の主権者教育(クローバル・シチズンシップ教育)を開催

2020.01.23

本校独自の主権者教育(クローバル・シチズンシップ教育)を開催

 沖縄尚学を特徴づける教育活動の一つにクローバル・シチズンシップ講座があります。担当は名城政一郎副理事長です。本学に務めながら、米ミネソタ州のセント・メアリーズ大学大学院でDoctor of education[博士(教育)]を取得しました。家族で留学、その時の体験が本校の空手の全生徒必修化やグローバル社会を見据えたグローバル・シチズンシップ講座につながっています。

 2019年12月10日と13日の両日、パイオニアβコース(旧名 体育コース)を対象にした講座が開催されました。生徒たちは緊張した面持ちで副理事長を見つめていました。

 「頭と体の能力がどんなに高くても、心の軸がしっかりしてなければ悪い方、良い方どっちに転ぶか分かりません。みなさんは、スポーツの大会で自分が得点をしたら、周りが喜んでくれる、そういう競技をやっています。自分を喜ばせて、周りを喜ばせることが重要です」

 これは、体育コースの生徒たちが日頃から感じていることなので、教室はすぐにうちとけた雰囲気になりました。副理事長はジョークもまじえながら、生徒たちに問いかけました。生徒たちは懸命に自分なりに考え、時折、隣の生徒とも相談し、答えました。

 副理事長は「場所がどこであれ、相手がだれであれ、プリンシプル(自信を持って判断する力)をしっかりと持っていれば対等に付き合える。スポーツという勝負の世界で頑張っているみなさんはこの重要さが分かっていると思います。それを頭と心と身体に入れないといけない」と語りました。

 生徒たちは身を乗り出して聞き入っていました。

「教室の席替え」の演習を通して、生徒たちは、集団における意思決定の判断基準をディスカッションし、学びました。

 副理事長は、講座の中で、自分の中にぶれない判断基準を確立すること、自己実現と社会貢献をすること、帰属意識を共有すること、リーダーの資質を意識することを強調しました。

 講座の締めくくりで、副理事長は「リーダーの資質として大切なことは、L4、つまり、チームのことを自分事として考える姿勢とそこから生まれる自信と勇気です」と語りました。

 本校が目指す「グローバル中・高校生」とは、『世界で通用する学力と人間力を身に着けた中・高校生』のことです。その一環で行われているのが、本校独自の主権者教育、すなわち「グローバル・シチズンシップ教育」です。グローバルシチズンシップとは「世界で大人と見なされる資質」のことです。「帰属意識(パーソナル・ローカル・ナショナル・リージョナル・グローバル)」「責任感」「政治参加の意欲」「批判的思考力」「公正を求める姿勢」を、世界で認められる大人の資質とみなしています。本校では全校生徒が、副理事長を講師に、一年に数回のシチズンシップ講座を必修授業として受講します。

 

 講座を受けて、空手部の比嘉桃子さんは、「副理事長先生のお話を聞いて、たくさんの事を学ぶことができました。帰属意識共有度の確認では、L0からL4まであり、どれも言われてみればふにおちることばかりで、あらためて自分を見つめ直す機会となりました。自分も、空手部のキャプテンとして、みんなを安心させ、誰からも信頼されるリーダーになれるように、頑張りたいと思います」と述べました。

 台湾出身の留学生で、野球部の張博瀚君は「副理事長の講座を聞いて、自分に今不足している事は共感することとチームメイトに注意することができないことだと思います。チームの事も自分の事と思って一緒に頑張り、人の事も助けてあげることができ、最終目標は周りの人に安心感と喜びをおこすような人になりたいと思います」と感想を述べました。

 

 

 講座の要旨

 人間の本音には良い本音と悪い本音の二種類があり、善悪を確認していい方に調整する必要がある。三種類の人間の能力として頭と心と身体がある。頭と身体の能力がどんなに高くても、心の軸がしっかりしていないと良い方にも悪い方にも転ぶ可能性がある。自分の良い本音を生かせるにように自身を教育し、本音を確認修正しながら自己実現と社会貢献をすることがセルフマネジメントである。それによって自分も人も幸せにする。自己実現とはできないことをできるようにすることであり、社会貢献とは、周りを安心させ喜ばせることである。帰属意識は同じ集団に属しているという意識である。帰属意識の共有度はL0からL4に分けられる(※Lはレベル)。L0は自分の基準(本音)に基づく言動。法律や学校の校則にそった言動がL1。さらに、たとえ罰則がなくても、やるべきことはやり、やるべきではないことはやらない、そして目標達成のために必要な言動がL2である。L3は仲間が苦しんでいるときや喜んでいるときに共感することのできる姿勢である。L4は自分事として受け止めた言動。人の上に立つリーダーはL4を心がけなければならない。チームにL4レベルの人間が多いほどチームのクォリティーが上がる。リーダーはその責務として、L1からL4に反する言動があったときには、叱責する責任と勇気を持たなければならない。これがチームのメンバーを安心させ、誰からも信頼されるリーダーの条件の一つになる。

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